固定残業代についてのお話しです
本日のお話は固定残業代についてです。
固定残業代とは、残業の有無にかかわらず、一定の残業代を支払うことを約束する、労働契約の一つの形態です。
過去は以下の理由により導入が図られてきたようです。
①労働時間の管理が、出勤簿によるアナログな形態で行われており、給与計算も手作業であったため、事務負担が大きかった
②生活給として、一定額を支給していた
③残業代を一定額に抑えることによる労務費の低減
しかし、IT化・コンピューターの普及や勤怠管理のデジタル化により、労働時間を把握し、それに基づいた賃金を計算することが容易になっています。①の理由は薄れているのが現状です
②についてはいかがでしょうか?”働き方改革”の重要性が叫ばれる中で、本来労働時間に対して支払われる、残業代を生活給として支払う仕組み自体に無理があります。
これからは、成果に対して報いる仕組みが重要ですし、賃金だけではなく働きやすい制度の導入や、労働環境の整備にお金を使うことも重要です。
③については次のような判例があります
後ほど解説しますので読み飛ばしていただいて大丈夫です
アクティリンク事件(H24)
周知されている賃金規定上「時間外労働割増賃金で月30時間相当分として支給する」と定められている「営業手当」について,「固定残業代の支払が許されるためには,実質的に見て,当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していることは勿論,支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され,て固定残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には別途清算する旨の合意が存在するか,少なくともそうした取扱いが確立していることが必要不可欠であるというべきである」とした上で,「営業手当は,営業活動に伴う経費の補充または売買事業部の従業員に対する一種のインセンティブとして支給されていたものとみるのが相当であり,実質的な時間外労働の対価としての性格を有していると認めることはできない。」
【簡単に解説】
固定残業代による支払い方法が許されるのは、その固定残業代が何時間分の残業代に当たるのかを明示されており、その時間を超えた場合は、超えた時間に相当する残業代の支払いが別途必要ですよ。
と書いてあります。
③の理由もこの判例を見ると適切ではありません。
この状態を放置することは、将来の紛争リスクを高めることになります。
これからは、固定残業代を廃止する企業も増えてくるものと思われますが、ちょっと待ってください
今ある制度を廃止する場合も慎重に行う必要があります。固定残業代の廃止は「残業が無い場合でも、その額を支払う」ことも廃止することになりますから、労働条件の不利益変更とみなされる可能性があります。
変更に当たっては、従業員に対してその趣旨や一方的に不利な変更ではない事、検討に当たって考慮した事など誠意をもって話し、ある程度の同意をっ取り付けることが必要です。
また、36協定を締結相手である、労働者代表を巻き込むことも有効です。
【その他】
その他として、私の想いを少しお話したいと思います。
もちろん一定の条件をを満たすことで、固定残業制は必ずしも違法ではありません。
ただ、これまでお話をした理由から、新たに導入する必然性はありません。
現在も、固定残業代を労務費削減の有効な手段として宣伝する、社労士がいることは非常に残念なことです。これを導入しようとする事業主についても同様です。
わたしは、これまでもお話しをしてきたように、持続可能であることを重視して活動しています。それにより、従業員・企業・取引先・地域が成長することが出来ると確信しています。
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